筑豊地方の産業遺産探訪。石炭の流れを追って若松を散歩した話。
筑豊炭田で産出された石炭の積み出しで賑わった、北九州市の若宮地区。
石炭産業は衰退してしまいましたが、当時の名残を思わせる建物などが残り、ぶらり散歩のも楽しい。
そんな感じで前回に引き続き、筑豊炭田に関するお散歩の話。
このページはこちらの記事の続きです。
直方市石炭記念館から直方駅を通り過ぎて、住宅街にある筑豊直方駅へ。
駅は高架になっており、このまま延伸するような雰囲気を醸し出す筑豊電気鉄道に乗ります。
高架のホームへ行ってみると、そこにはいわゆる路面電車タイプの車両が停車していた。
終点までに路面電車区間が存在するのかと思えば、そうでもない。
このタイプの車両を使っているのは、過去に路面電車の西鉄北九州線に乗り入れしていた名残らしい。
路面電車区間が無いのに路面電車ってのも変な雰囲気だな、など感じながら乗車。
休日の日中は30分毎の運転なので、一本逃したらロスが大きいのがネック。
しばし電車は住宅街を走り・・・。
「希望が丘高校前」という駅で下車。
この駅の近くに世界遺産構成資産「遠賀川(おんががわ)水源地ポンプ室」があるというのを直方で知った。
筑豊電気鉄道は最初から乗る予定だったし、簡単な寄り道程度だから行くしかないですね。
駅から住宅街を歩くこと10分程度・・・
ポンプ室みたいなのが見えてきた。
あ、非公開なんすか・・・。
世界遺産に登録されているし、てっきり資料館か何かが併設されてるのかと思ったら
特にそんなものは無く、ただ敷地外からポンプ室を眺めるだけという上級者向け世界遺産。
ぐるっと回って交通量の多い道路側へやって来ました。
2015年に認定された、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産。
資料館みたいなのは無かったものの、解説パネルは設置されていました。
遠賀川水源地ポンプ室は、官営八幡製鐵所第一期拡張計画に伴う工業用水不足を補うため
1910年より操業を開始した明治建築の典型的なレンガ建造物。
非公開なのは今現在もなお現役で稼働し続けているから、なのです。
実際に使ってるなら危ないし見学出来ないのは仕方ないね。
最近の流行に乗ってか、写真撮影用のでっかい文字盤が置いてありました。
ポンプ室の裏手には自動車での訪問者向けに駐車場が用意されて、ついでに古いポンプが置いてありましたが
どう見ても地元民の私用駐車場みたいに使われてるのは大丈夫なんだろうか・・・。
はい、そんな感じの世界遺産。鉄道で行けなくもないですが、自動車の方が便利ですね。
さて寄り道も程々に次へ向かいましょう。
筑豊電気鉄道の終点、黒崎駅に到着。
ここにも「黒崎歴史ふれあい館」という小さな資料館があった事を後に知る。寄っておけば良かった。
JRに乗り換えて折尾駅へ向かう。筑豊炭田と関わりの深い若松地区へ行かないとね。
筑豊本線への乗換のため、最近高架に切り替えられた折尾駅へ。
名物の駅弁立ち売りのおじさんを駅構内で見かけつつ、目的の筑豊本線のホームへ移動する。
この駅舎もじっくり見たかったのだけども、時間が無かったのでまた今度。
構内に高架化の模型が置いてありました。
かつては鹿児島本線と筑豊本線が十字に立体交差してた折尾駅も、こんな感じに近代化されました。
で、お目当ては「若松線」とも呼ばれる筑豊本線の折尾-若松間
ここには「DENCHA」の愛称を持つBEC819系蓄電池電車が営業運転しており、これを見たかった。
九州地区での蓄電池電車は2016年のデビューで、見に行くのも「今さら」な感じもしますが
なかなか見に行く機会が無かったし、新しい技術や車両というのはやはり乗って体感したいところ。
30分毎運転くらいのローカル線ですが、2両編成の車内は沿線住民で賑わっていました。
かつて石炭輸送で賑わった筑豊本線。今や過剰にも感じる複線はその時代の名残。
写真ではどう見ても非電化の区間ですが、そこを走る蓄電池車両の走行音は、まさに「電車」の音が響き渡る。
車両はJR九州らしくドーンデザインな内装。
似たり寄ったりな部分もありますが、私はドーンデザインは結構好きです。
終点駅の若松駅ではバッテリーに充電しているのかな?と思ったらパンタグラフ下げたままだった。
この車両、折尾-直方の電化区間だけで充電して若松まで来ているのか・・・。なんか胸熱だな。
かつて石炭の積み出しで賑わった若松駅も、今は2両編成の電車がやって来るのみ。
自動改札機がありICカード「SUGOCA」に対応しつつも、朝以外は駅員不在の無人駅。
駅舎には昭和40年代の若松駅の写真がありました。
どれが駅舎なのか分からないくらい広大な線路が見えます。
駅の外に展示されていた石炭車。
これを使って直方などの筑豊地区から石炭を輸送していたのか・・・。
駅南にあっただだっ広い空間。この広場も石炭積み出しの為の貨物操車場だったようだ。
広場の隅に配置された蒸気機関車。車体はボロボロだ。
こういう物を残しておかないと、ここが貨物操車場であった事が分からないですもんね。
案内って大事。
さて、若松駅から若松大橋のあたりは古い建物とかいくつか残ってるらしいので、ちょっと歩いてみよう。
早速目に付いた写真右側の小屋。
この小屋は「旧ごんぞう小屋」という建物。当時の現物ではなく、それを模して作られたもの。
かつて石炭輸送がまだ水運だった頃、「ごんぞう」と呼ばれる担ぎ手によって人力で石炭が運ばれました。
このごんぞう小屋は、担ぎ手「ごんぞう」の詰所で作業の待機や休憩に使われていたという。
時代は鉄道と機械化により、若松からごんぞうの姿は無くなりました。
そんな歴史を伝える若松地区のごんぞう小屋。
続いて歩いて目に入ったのが、
明治38(1905)年に建てられた若松石炭会館。
現在は洋菓子屋とから揚げ屋が入居してました。
続いて目立つのは旧古河鉱業若松ビル。
足尾銅山の開発を行い、銅の製錬に必要な石炭の買付を行うためにここ若宮に拠点を置き
更には自社でも炭鉱の開発を手掛けた古河鉱業(現古河機械金属)の建物。大正8年(1919年)に出来ました。
「何か展示でもやってるのかな?」と入ってみたところ、事務所に居たおっちゃんに教えて貰いました。
老朽化により取り壊しが計画されましたが、保存運動により北九州市に移管され
耐震補強工事を受けたうえに現在は北九州市の「貸し会議室」として運営されているらしい。
今日はいけばな教室とかそろばん教室とかやっていました。
「上にちょとだけ展示があるから観ておいでー」と、教えて貰ったので有り難く見に行く。
一室には若松が石炭輸送で栄えた時代の資料がいくつか展示されていました。
後から知ったのですが、この旧古河鉱業若松ビルも近代化産業遺産に指定されている代物。
帰り際にお礼を伝えると、「ここ安いし、お弁当食べるだけでもいいから借りてってよ」と案内チラシに目を通す。
近代化産業遺産の貸し会議室が1時間100円ってクッソ安いやん。北九州市凄いな・・・。
橋の奥にあるのは、若築建設の本店。
わかちく史料館という展示施設がありますが、16時閉館で既に閉まっていました。残念!!
不正入港を監視するために使われた「出入船舶見張り所跡」
建物が傾いており、けれどもドアは水平を保っているのでびっくりハウスのような状態に。
元々は写真右側の柵が海岸線で、見張所だけが海上に出っ張っているように存在したそうですが、
護岸工事で堤防の位置は変わり、保存工事でドアが水平に付け替えられこうなったようだ。
うーん、元々とは違う姿になってしまったのか。どうしてこうなった!
渡船場の目の前にある上野ビル(旧三菱合資会社若松支店)
どう見ても現在進行形で企業が使ってそうなビルだったのでスルーしてたのですが、
案内書きをよく見たら「廊下とか共用部分は見学して良いよ」的な事が書いてあったので行ってみよう。
そこは良く言えばノスタルジー、悪く言えばボロいビルの廊下がありました。
これらの景観的な資源を生かし、北九州市は映画やドラマのロケの誘致に力を入れています。
廊下の壁にはこの地区で撮影されたであろう、作品のポスターが貼ってありました。
しかしまぁ、ボロといえばボロだが、これは味わいのあるビルですね。
光を取り入れるために中央部分が吹き抜けになった内部構造。レトロや!
1Fの天井部分もガラス張り。物珍しくて面白かった。
さて、色々と見ていたらもうこんな時間や。
到着が遅くなって見られなかった施設もあったけども、ふらっと訪れた割りには色々と見られたかも。
若松からは市営の渡船で鹿児島本線の戸畑駅方面へ接続しているので、駅まで折り返す必要はないです。
渡船の運賃は大人100円。乗船時間3分くらいなのでこんなもんかな?
若戸航路は日中15分毎に運行。こういう状況下のためか観光客は少なく殆ど地元民でした。
橋が出来ても自転車や徒歩利用者は利用出来ないという理由で残った渡船。
観光地も良いけど、地元に根付いた交通機関を利用させて貰うのも楽しい。
3分程度の乗船ですが、室内にはテレビ付きの休憩所がある優しさ。
あっという間に到着。ありがとう、若戸渡船。
戸畑側の渡船場と若戸大橋。吊り橋ってカッコイイよね・・・。
戸畑駅からJRの普通列車に乗って、小倉駅へやって来ました。
そういえば半年前にも来たし、ここ1年は結構な頻度で九州に来ている気がする。
小倉でも寄りたい所があったのですが、時間が時間だけに閉店済みでした。
折角小倉駅で下車したのだし、資さんうどんを食っておきますか。
小倉からは「九州ネットきっぷ」を使ってサクっとソニック号で移動。
ソニックに乗るのは久しぶりだなぁ。この変わった車内も久しぶりだ。
そんな感じで博多駅に到着。
九州訪問で今回は筑豊の炭鉱を巡りましたが、やはり自分の興味あるジャンルの探訪ってのは楽しいものだ。
行き当たりばったりで寄れなかった場所もあったけども、出会った人は皆親切で楽しい1日でした。
そして今回九州を訪れた主目的はこれから。次回に続きますl。