日本の海底には駅がある?長さ世界一「青函トンネル」の途中駅、竜飛海底駅を見学する(前編)
本州と北海道を結ぶ大動脈「青函トンネル」を知らない人は居ないでしょう
全長53.85km、海底部23.30kmという鉄道トンネルで営業中のトンネルとしては世界一長いトンネルでもあります。
(2010年に貫通したスイスの「ゴッタルドベーストンネル」が開通すると、全長は57kmのため世界一の座を奪われます)
そんな青函トンネルですが、その途中に2つの駅が存在します。そのうち本州側にあるのが「竜飛海底駅」
海面下140mの位置にあるその駅には通常列車は停車せず、見学整理券を持つ者のみが下車を許される場所
そんな日本の珍駅こと竜飛海底駅と青函トンネルを見学するコースの話題です。
このページはこちらの記事の続きです。
青森駅から乗車するのは、JR北海道のスーパー白鳥号。芋虫のような色と顔つき
東北新幹線の新青森開業前から本州から函館までを接続していた列車ですが
今は新青森駅を始発として青函トンネルを通り抜け、北海道の函館駅までを結びます
ドア脇のイラスト。やっぱりアピールのポイントは津軽海峡と青函トンネルですね
一応指定席特急券を買っておいたのですが、指定席が満席で自由席の方がガラガラという現象・・・
自分の指定席の隣に、既に大きな荷物を持った人が座ってたので空いてる自由席の方へ移動しました
座席目の前にあるのは青函トンネルの図解と列車の通過時間
「青函トンネルすごいだろー」と言わんばかりのアピールですね。はい
これから向かう「竜飛海底駅」は図解でいう所のこの場所
地上からトンネルに潜り込み、海底部に達する直前に存在します。
竜飛海底駅で見学する為には、事前にJRの窓口で「海底駅見学整理券」を購入する必要があります。
全国のJR窓口で購入出来るそうですが、特殊なきっぷのため発券まで結構時間が掛かりました ・・・
整理券は2,040円で、到着と出発に使う特急券も同時購入が必要です
列車の現在位置を表す車内の表示板。本当に芋虫っぽいな・・・
線路は中小国を過ぎたら津軽線と海峡線に分岐。
その海峡線は、現在スーパー白鳥や貨物列車、それに寝台特急などが運行されていますが
青函トンネル部分を含めて、現在建設中の北海道新聞の一部分でもあります。
窓から見えてきたのは北海道新幹線の高架。これがここで在来線として先行利用している海峡線へと繋がります
一瞬しか見えませんでしたが、こちらが海峡線の津軽今別駅
青函連絡特急が往来するというのに、この駅に停車する列車は1日1往復のみ・・・
そんな津軽今別駅は、北海道新幹線開業時に「奥津軽駅(仮称)」として新幹線駅に昇格します
そのため、駅の近辺では開業に向けて工事が絶賛進行中でした。
新幹線と在来線で線路を共用する予定の海峡線
既に新幹線用のレールが敷設されており、窓からは3本のレールが確認できました。
そして・・・
青函トンネルに・・・・
はいったー!青函トンネルに入りました!
車内の表示板にも「青函トンネルに入りました!!」の文字が。どれだけプッシュしとんねん!
※青函トンネルに入る前にもいくつかトンネルがあるので、気にしてないといつの間にか青函トンネルに入ってる
青函トンネルに入ると、次はお待ちかねの竜飛海底駅
竜飛海底駅は誤下車を防止するため、駅に停車したら決められた車両(2号車)のドアしか開きません
座席に居ても景色変わらんので、下車の案内が流れたらすぐに移動しました。
竜飛海底駅に停車し、非常ドアコックを操作して車掌がドアを開ける
それー、海底駅に降りるぞー!
あれ、やけに背広姿の人が多いんですが。出張ついでに観光ですか?
下車後、人数を確認したらスーパー白鳥は竜飛海底駅を発車する
海底に取り残されてしまった・・・。
で、この背広姿の人たちは何なんだろう?
ひたすら続く竜飛海底駅のトンネル。一応、ここは鉄道駅らしい
背広の皆さんは持参したヘルメットを早着した後に、名刺交換をして何処かへ消えて行きました・・・
どうやら、北海道新幹線の建設に関する視察とかそういう関係らしいです。何事かと思った
で、今回参加するのは私と京都から来たという方(左)の2名だけでした。さすが平日だ
ここからはスタッフ(右)の案内で竜飛海底駅を見学します。
「駅」という事になっているこの長いトンネルは、青函トンネルの「作業坑」と呼ばれる部分
線路のある「本坑」と並行して設置されており、緊急時の避難通路の役目があるそうです。
作業坑(誘導路)と本坑を繋ぐ連絡誘導路が数百メートルおきに設置されています。
万が一、列車事故などが発生した場合には、この連絡誘導路を使って作業坑(誘導路)へと脱出をするそうです。
トンネルは広く長く、そして無数に分岐をしています。案内が無いと間違いなく迷子になりそう
作業坑(誘導路)は途中で施錠されていましたが、これが北海道側まで延々と続いているというのが驚きだ
竜飛海底駅には竜飛定点と呼ばれる保安上の基地が設けられており、ここから地上へと脱出する事が出来ます
ここからは、その地上へ抜けるための避難通路を歩いて見学します。
しっかり作られているトンネルですが、どこからともなく海水が漏れてきます
その海水を集めて地上まで送り出すポンプがこちら。この手の保守設備だけで莫大な費用が掛かるとか
「避難所」と説明書きのあるエリア。ベンチと便所が並んでいます
国土地理院の竜飛定点。海面下140メートルの位置になります。
かなりの地下に居るんですが、周囲がトンネルなので実感は薄いですね
ちなみに気温は年間を通じて約20℃で一定。湿度は80%との事です
ひたすら続くトンネル
海面下140メートルの便所。汚物処理に凄い費用が掛かってるとか・・・
竜宮水族館・・・あれ、何もいない
通路ばかりで退屈しないように用意された水槽らしいですが、現在はご覧の通り
青函トンネルの模型もボロボロですね・・・。
緊急時に使われる事を想定した休憩用ベンチが並ぶ
この便所とベンチがある避難所に案内用のパネルが並んでおり、ガイドさんによる説明
こんな地下世界にも公衆電話が。しかも2013年では珍しくなったピンク電話じゃないですかー!
電話帳が1992年だった。これはアカン
避難所から先、案内されたのが重厚な扉。排煙設備らしく、このドアの向こう側から20m/sの風が流れているそうです
非常時はこの重厚な扉がフルオープンして火災の煙を押し出し、トンネル内の煙の充満を阻止します
避難者が視界を奪われたり避難経路が分からなくても、風上に向かって避難すれば良い仕組みだという
人ひとりが通れるくらいの扉が付いてますが、非常時はトンネルの幅全部が開かれるとの事。
非常時以外に20m/sの風が抜けるとマズいため、扉は重厚かつ、同じような構造の扉を2回抜けました
・・・ところで、風速20メートルって台風ばりの強風だけど歩けるのかしら?
風の扉を抜けたら再び鉄柵。あれ、行き止まり?
いえいえ、ここからは地上からも入る事の出来る青函トンネルの見学施設の一部へと合流します。
避難用の坑道の一部がそのまま「青函トンネル記念館」の展示施設になっているようです。
ここからは一般の展示内容を見て回ります
しかし順路を逆走しているので、いきなり青函トンネルが完成した所から始まるという
昭和に作られた世界最長のトンネル。大勢の作業員が投入され、多くの命が失われました
「工事断念か!?」とも言われた異常出水によるトンネル水没事故も発生したそうです
トンネルといえば、現代ではシールドマシンで穴を掘り進むのが当たり前となっていますが
当時の技術で導入したシールドマシンは津軽海峡の複雑な地盤に対応出来ず、早々に作業を打ち切り。
結局は火薬による発破工法や、上記写真のように人力で掘り進む手段を使って掘り進んだという
不気味に照らされる地下トンネル内
地上から物資を運ぶ為に使われていただろう、トロッコ用の線路が延びる
しつこいようですが、ここは地下約140メートルのトンネルです。
ボロボロの自転車が並んでました。
坑道の見学ルートもひととおり見終えたので、ここからケーブルカーにて地上へと向かいます
このケーブルカーは「青函トンネル竜飛斜坑線」という路線名で、一応私鉄という扱い
営業路線は778mで日本一短い私鉄だという。でも殆ど展示施設の一部みたいなものですね。
地上の「青函トンネル記念館駅」と地下の「体験坑道駅」を約8分で結ぶ路線
非常時にケーブルカーが壊れても大丈夫なように階段付き。うん、階段は辛そうだ・・・
この斜坑、実はもっと地下まで延びており、最深部は先進導抗のある地下約250mまで続いているという
ずーっとトンネルが続いて、真っ暗で何も見えない不気味さ・・・
ケーブルカーが到着しましたので乗車
ガタガタと揺れる車両に乗りながら斜坑を上へ、上へ進みます
地上へ到着したものの、乗降口が大きな建屋に覆われているのに気付く
地上と地下と気圧の差があるため、ケーブルカー側の隔壁が閉じられるまで出口が開かないという
そして建屋を抜けると、そこには「地上」があった・・・。
□見学レポート後編に続きます